2024年05月19日

第83回「りんどう句会」報告

第83回「りんどう句会」報告
(2024年4月29日(月)鎌倉芸術館会議室にて開催)

第83回句会は12名の出席、1名の欠席投句で全39句の出句、13名による選句でした。当月の兼題は高吉よしえさん出題の春の季語「囀(さえずり)」です。

今月の最高点は、前川たくさんの「種ばれの卒寿の手品山笑ふ」。今年卒寿を迎えられ
る前川さんをお祝いする会の席上、ご親族の前で、ネタはとっくにバレている手品をご本人が得意げに披露しているという、お目出度くも微笑ましい句です。季語の「山笑ふ」がとても効いています。
・同じく8点句の田村昌恵さんの句の「花筵」とは、お花見の宴席に使う筵を言います。
愛犬に「お座り」と言ったら、近くに寄ってきたどこかの小さな子も一緒に「おすわり」してしまったという、これもまたいかにも春らしい明るく微笑ましい句です。
・6点句の浜崎かづきさんは、弘前の見事な桜に出会った思い出を詠みました。「かくも美し」にその感動が表現されています。
・5点句の田村昌恵さんの「囀り」の句、読経(どっきょう)していた覚園寺のご住職(同窓の方)の声がまことに素晴らしかったとのこと。
・渡辺伊世子さんの「老桜(ろうおう)の」の句。梶井基次郎の『桜の樹の下に』をも連想させる句との評もありました。あるいは、「屍体」とまで言わなくても、「宿神(しゅくしん)」(小洞に住む神の名)か何かの存在を感じたか・・・。「畏れけり」の措辞が的確。手練れの作者の秀句です。

次回は5月27日、兼題は田村昌恵さん出題の「蜘蛛」です。兼題1句と当季雑詠2句をご用意ください。また、当句会への新規入会あるいは体験参加希望の方は、鎌倉稲門会事務局あてメールでお問合わせください。
【今月の高得点句(同点句は兼題優先)氏名は俳号 (原句のまま)】
(8点句) 種ばれの卒寿の手品山笑ふ        前川たく
     「おすわり」に犬も子も座す花筵      田村昌恵
(6点句) 散り際のかくも美し花筏         浜崎かづき
(5点句) 囀りに和する読経覚園寺         田村昌恵
      老桜の闇の深さを畏れけり         渡辺伊世子 
(3点句) 来年もこの花見むと言ひし母       田村昌恵
     遠足の子ら一団のつむじ風        浜崎かづき
      居酒屋を出て駅前の遅日かな       吉崎明光
      手術終へ深く息吸ふ夏近し        藪野詠子   
      シェパードのごとく遠足児らに添ひ    前川たく

                                       (吉崎明光記)
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第82回「りんどう俳句会」報告

第82回「りんどう句会」報告
(2024年3月25日(月)鎌倉芸術館会議室にて開催)
第82回句会は14名の出席、2名の欠席投句、1名の見学参加で全48句の出句、15名による選句でした。当月の兼題は浜崎かづきさん出題の春の季語「風車」です。また、今回から松本賢悟さんが新しく会員となられました。

今月の最高点は、石川一洋さんの「風さそひ風にさそはれ風車」で、7点を獲得しまし
た。リズム感があり、それが句の流れを作っていて、風車の回る情景をうまくとらえているという選評が語られました。作者によると、この句は突然ふっとできたとのことでした。

 次は手島廉雲さんの6点句「初音聞く逝きし友かと空仰ぐ」でした。選者の方々は亡くなった友達のことが偲ばれジンとくる、共感を覚えたという選評を語りました。また、この句により、りんどう句会に居られ、鳥を愛し鳥に詳しかった故上野なをひろさんが思い出されるという会員が多かったようです。

 次の5点句は、田村昌恵さんの「ママを待つ」、鈴木金平さんの「何事も」、吉崎明光さんの「卒業歌」、および田村さんの「流鏑馬」の句の4句でした。
 
次回は4月29日、兼題は高吉よしえさん出題の「囀(さえずり)」です。兼題1句と当季雑詠2句をご用意ください。また、当句会への新規入会あるいは体験参加希望の方は、鎌倉稲門会事務局あてメールでお問合わせください。

【今月の高得点句(同点句は兼題優先)氏名は俳号 (一部修正)】
(7点句)   風さそひ風にさそはれ風車     石川一洋
(6点句)    初音聞く逝きし友かと空仰ぐ    手島廉雲
(5点句)   ママを待つ子らの手に手に風車   田村昌恵
        何事も成せぬ身なれど春さかる   鈴木金平
        卒業歌女子高生の駅ピアノ     吉崎明光
        流鏑馬や射手も戸惑ふ春疾風    田村昌恵
(4点句)   託児所の空き瓶に挿す風車     福田くにもと 
        ペダル踏む先を風切る風車     山田伸子
          まんさくのざんばら髪に風の櫛   浦野和子
          恐山水子の数の風車        手島廉雲
(3点句)   小さき掌に嵐呼ぶかや風車     鈴木金平
         風車売風引き連れて来たりけり   浜崎かづき
         点滴の針もついでに針供養     浜崎かづき
         引鶴の集ひ旅立つ時計り      千葉ふみこ
                             (山田伸子記)
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2024年04月27日

第81回句会


第81回「りんどう句会」報告

(2024年2月26日(月)鎌倉芸術館会議室にて開催)

第81回句会は12名の出席、2名の欠席投句、1名の見学参加者(松本賢悟さん)で全45句の出句、15名による選句でした。当月の兼題は吉崎明光さん出題の春の季語「入学試験です。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                          

今月の最高点は、藪野詠子さんの春月に夫を見舞ひてひとりぼちで、9点を獲得し

ました。季節は春になったけれど、ご主人の入院で一人で帰宅するのは寂しいという心情が表現されており、同じような経験のある人もまた経験は無い人でもこれは他人事とは思えないという多くの共感を呼んだようです。


 次は8点を獲得した2句で、山田伸子の「マチネーへふんはり纏ふ春ショール」および吉崎明光さんの「涅槃西風(ねはんにし)指揮棒胸に征爾逝く」です。「マチネーへ」の句については、句全体から春の柔らかい光が匂うようで、お洒落できれいな句だという選評が選者から語られました。

 また、「涅槃西風」の句には、季語がこの句にぴったりだというコメントが各選者から述べられました。この句の季語は「涅槃西風」で、釈迦が入滅した頃に吹く季節風のことで、春の始まりを告げて吹く風という思いが込められているそうです。この時季に他界した指揮者小澤征爾の死を悼んだ句としてこの春の季語が選ばれたのは、大変相応しいという選評でした。


次回は3月25日、兼題は浜崎かづきさん出題の「風車」です。兼題1句と当季雑詠2句をご用意ください。

 当句会への新規入会あるいは体験参加希望の方は、鎌倉稲門会事務局あてメールでお問合わせください。


【今月の高得点句(同点句は兼題優先)氏名は俳号 (一部修正)

(9点句)  春月に夫を見舞ひてひとりぼち        藪野詠子

(8点句)  マチネーへふんはり纏ふ春ショール      山田伸子 

       涅槃西風指揮棒胸に征爾逝く         吉崎明光

6点句)  そよと来てそつと撫でゆけ春の風       鈴木金平 

(3点句)  八十路過ぎ入試の夢を見なくなり       藪野詠子

       校門の雪にツルリと受験の日         石川一洋 

       受験子の自信に満つる面構へ         福田くにもと

       受験子の祖母も気忙し寺社巡り        田村昌恵

       雨音に茶の香を添へて炉の名残        千葉ふみこ

       能登時雨割るる珠洲窯なほ崩す        福田くにもと

       春寒や猶も戦火の収まらず          石川一洋

鳥交る恋に恋せし遠き日々          北村拓水

(山田伸子記)


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2024年02月13日

第80回「りんどう句会」報告

第80回「りんどう句会」報告

(2024年1月29日(月)鎌倉芸術館会議室にて開催)

第80回句会は11名の出席、3人の欠席投句、2人の見学参加者で全48句の出句でした。当月の兼題は安藤宗幸さん出題の新年の季語「賀状です。                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                       

今回は浦野和子さん、渡辺伊世子さんの2名の方が見学参加で投句および選句をされ

また、多くの合評が飛び交い、賑やかな句会となりました。

最高点は、田村昌恵さんのあの世へのポストが欲しい年賀状」で、8点を獲得しまし

た。亡くなった方ともう一度話がしたいという思いがやさしい言葉で端的にあらわされているというコメントが語られ、多くの方の共感を呼んだようです。

 次は6点を獲得した浜崎かづきさんの「ご厚誼を謝して最後の賀状とす」です。これは年賀状を今年で最後としたいという年配の方からの挨拶の句で、同様の趣旨のものが何句もありましたが、この句に点が集中したようです。言葉の流れが良く、句としてきれいであるという選評が語られました。

 5点句は、渡辺伊世子さんの2句、「風花や京の詠歌の尻上り」と「磐座の注連の鮮(あたら)し初明り」、および田村昌恵さんの句「初場所や地震(なゐ)鎮めむと四股を踏む」でした。

 次回は2月26日、兼題は吉崎明光さん出題の「入学試験」です。兼題1句と当季雑詠2句をご用意ください。

 当句会への新規入会あるいは体験参加希望の方は、鎌倉稲門会事務局あてメールでお問合わせください。

【今月の高得点句(同点句は兼題優先)氏名は俳号 (一部修正)

(8点句)  あの世へのポストが欲しい年賀状       田村昌恵  

6点句)  ご厚誼を謝して最後の賀状とす        浜崎かづき


(5点句)  風花や京の詠歌の尻上り           渡辺伊世子

       磐座の注連の鮮(あたら)し初明り      渡辺伊世子

       初場所や地震(なゐ)鎮めむと四股を踏む   田村昌恵

(4点句)  添書に笑みこぼるるや年賀状         手島廉雲

       詠を添へ水茎美しき賀状かな         渡辺伊世子

       富士を愛で地酒に酔うて探梅行        吉崎明光

(3点句)  炙りたる魚に手酌寒に入る          千葉ふみこ

       同年の八代亜紀逝き冬薔薇          石川一洋


    (山田伸子記)


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2024年01月15日

第79回「りんどう句会」報告

79回「りんどう句会」報告

20231225日(月)鎌倉芸術館会議室にて開催) 

78回句会は10名の出席、3名欠席投句で、3句ずつ全39句の出句、13名の選句でした。当月の兼題は手島廉雲さん出題の冬の季語「師走」です。

下記掲載の今月の高得点句のように、師走・年の暮の生活や感慨を的確に表現した句が出揃いました。

最高点8点句の、前川たくさんの「凍て風や手提げ一杯処方薬」には、「私なんぞ、薬屋が開けそうですもの」などの選評もありましたが、高齢者揃いの句会メンバーの全員が共感したようです。同じく、前川たくさんの「百円の借り」の句も何とも可笑しみを感じさせます。本当のところはもっと金額は大きかったようですが、俳句の滑稽味を創作したものです。

 そのほか、下記には掲載していませんが、いずれも石川一洋さんの二点句「お互ひに二番手として逢ふ聖夜」(お互いに本命を逃がした者同士の聖夜のデート)、「病院に手錠の男ゐる師走」(私は新幹線の中でその状況を目にしたことがあります。このような光景も俳句では詠めます)もユニークでオリジナル性の高い句でした。

 また、4点句の北村拓水さんの「句と遊び友と遊びて年暮るる」は、同窓の同好会である「りんどう句会」の楽しさを年末に改めて総括するものとして、ズバリの句でした。 

次回は2024129日(月)、兼題は安藤宗幸さん出題の「賀状」です。兼題1句と当季雑詠2句をご用意ください。

 当句会への新規入会あるいは体験参加希望の方は、鎌倉稲門会事務局あてメールでお問い合わせください。

【今月の高得点句(一部修正、同点句は兼題優先)氏名は俳号

 (8点句)   凍て風や手提げ一杯処方薬     前川たく

 (6点句)   師も友も土に還りて年暮るる    鈴木金平

 (6点句)  百円の借り思ひ出す師走かな        前川たく   

 (5点句)  裏金も千億も夢おでん酒        吉崎明光

 (4点句)  どの家も植木整ふ師走かな      藪野詠子

 (4点句) 子供らの影なき団地花八手      福田國幹

 (4点句)  句と遊び友と遊びて年暮るる     北村拓水

 (3点句)  師走とて常と変はらぬ老の家       高吉よしえ

   (3点句)  心までほっこりぽかり柚子湯かな   藪野詠子

   (3点句)  五十年変わらぬ顔と晦日蕎麦     鈴木金平

      (吉崎明光記)

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2023年12月26日

第78回「りんどう句会」報告

第78回「りんどう句会」報告

(2023年1127日(月)鎌倉芸術館会議室にて開催) 

  第78回句会は11名の出席、1名欠席投句で、3句ずつ全36句の出句、12名の選句でした。当月の兼題は石川一洋さん出題の冬の季語白菜」です。今回は、日常見慣れたこの兼題に「意外と難しい」と苦戦した方が多かったようです。最高点9点を獲得したのは、前川たくさんの句「鴛鴦(おしどり)の波紋に揺るる逆さ富士」でした。水面の鴛鴦が作った波紋に逆さ富士が揺れているという美しい情景が17音に見事に表現されていて映像が目に浮かぶようだという選評を多く得ました。

次の7点句は田村昌恵さんの句「山積みの白菜眩し道の駅」で稲門会のバス旅行の体験からできた一句だそうです。きれいにまとまっている句で、特に「山積み」「眩し」のことばが良い、情景を生き生きと表現しているとの選評がありました。

5点句もまた田村昌恵さんの句で、「玄関に門番のごと枯蟷螂」です。「枯蟷螂」はみずみずしさを失い、色褪せた冬のかまきりのことで、玄関にいる様子を「門番のごと」という表現でまとめているのが面白いという選評がありました。

次回は1225日、兼題は手島廉雲さん出題の「師走」です。兼題1句と当季雑詠2句をご用意ください。

当句会への新規入会あるいは体験参加希望の方は、鎌倉稲門会事務局あてメールでお問い合わせください。


【今月の高得点句(一部修正、同点句は兼題優先)氏名は俳号

(9点句)   鴛鴦の波紋に揺るる逆さ富士       前川たく

(7点句)   山積みの白菜眩し道の駅        田村昌恵         

5点句)  玄関に門番のごと枯蟷螂        田村昌恵

(4点句)  ラガーらに出陣学徒重ねけり      田村昌恵

(4点句) 落葉には紛れず孤高朴落葉        石川一洋

(4点句)  小春日に妻の小言と部屋整理      北村拓水

(3点句)  白菜はどんな相手もたらし込み        鈴木金平

  (3点句) 一葉忌恋に明治は遠からず       吉崎明光


         (山田伸子記)


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2023年11月07日

第77回「りんどう句会」報告

第77回「りんどう句会」報告

(2023年10月30日(月)鎌倉芸術館にて開催) 

第77回句会は14名の出席で、一人3句ずつ全42句の出句でした。当月の兼題は福田くにもとさん出題の秋の季語薄紅葉です。

今回は、季節は秋なのですが、10月に入っても気温の高い日が多く、兼題の「薄紅葉」を実際に目にすることはむずかしかったようです。

今回は浜崎かづきさんの句「みどり児の結ぶ拳や新松子」が最高点11点を獲得しました。

「新松子(しんちぢり)」は、秋の季語で青々とした新しくできた松かさのことで、みどり児の拳と結び付けたのが素晴らしいという選評が多く語られました。

次の8点句「はにかみて頬染めしごと薄紅葉」は鈴木金平さんの句で、「はにかみて」という語の選択が良く、また「頬染めしごと」という「薄紅葉」の比喩が素晴らしいという選評がいくつもありました。

 また、6点を獲得した吉崎明光さんの「宍道湖」の句は、実際の宍道湖をうまく表現していて映像が目に浮かぶようであり、うまくまとまっているということでした。      

次回は11月27日、兼題は石川一洋さん出題の「白菜」です。兼題1句と当季雑詠2句をご用意ください。

 当句会への新規入会あるいは体験参加希望の方は、鎌倉稲門会事務局あてメールでお問い合わせください。


【今月の高得点句(一部修正、同点句は兼題優先)氏名は俳号

11点句)   みどり児の結ぶ拳や新松子          浜崎かづき

(8点句)  はにかみて頬染めしごと薄紅葉        鈴木金平         

6点句)   宍道湖に小舟溶けゆく霧の朝         吉崎明光          

(5点句)  行者道辿りてゆけばこぼれ萩         石川一洋

(4点句)  尼寺の唯一本の薄紅葉            前川たく

(3点句)  車椅子の姉の軽さや薄紅葉          田村昌恵

  鰯雲天を覆ひて大社             千葉ふみこ

  名を聞きし小鳥来てますなをひろさん     田村昌恵

  秋彼岸浄土へ向かふ兄白寿          藪野詠子


     (山田伸子記)


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2023年10月25日

第76回「りんどう句会」報告

                              第76回「りんどう句会」報告
                  (2023年9月25日(月)鎌倉芸術館にて開催)
  第76回句会は12名の出席、2人欠席投句、全42句の出句でした。当月の兼題は山田伸子出題の秋の季語「夜長」です。
今年は9月になっても夏のように暑い日が多かったのですが、りんどう句会にはしっとりとした秋の句が多く投稿されました。今回の最高点は、吉崎明光さんの句「病む妻にプリンひと匙長き夜」で、12点を獲得しました。
 次は、田村昌恵さんの「寝そびれて母の歌集を繰る夜長」および石川一洋さんの「行かぬまま老いてしまへり風の盆」の2句でそれぞれ6点を集めました。
また、「ひとときをこぼるる萩のそばにゐて」は吉崎明光さんの句で5点でした。            
 次回は10月30日、兼題は福田くにもとさん出題の「薄紅葉」です。兼題1句と当季雑詠2句をご用意ください。
 当句会への新規入会あるいは体験参加希望の方は、鎌倉稲門会事務局あてメールでお問合わせください。

                    【今月の高得点句(同点句は兼題優先)氏名は俳号】
              (12点句)  病む妻にプリンひと匙長き夜       吉崎明光         
              (6点句)   寝そびれて母の歌集を繰る夜長    田村昌恵
                     行かぬまま老いてしまへり風の盆     石川一洋
              (5点句)   ひとときをこぼるる萩のそばにゐて    吉崎明光
              (4点句)  妻の居て夜長の会話弾まざる       北村拓水
              (3点句)  潮風に秋の混りて入日燃ゆ        千葉ふみこ
                             金継ぎの花瓶に二輪桔梗挿す       福田くにもと
                             新涼や故郷にはまだ古き恋         鈴木金平
                             枝豆か議論かどちらかにしろよ       吉崎明光
                             窓開けて湯殿に響く虫の声         北村拓水
                             きょうだい児てふ言葉知る秋重し     千葉ふみこ
                               (きょうだい児とは兄弟姉妹に障害児を持つ子供)
                     ミニバスは年寄ばかり秋夕焼        田村昌恵

                                                                                         (山田伸子記)

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2023年09月20日

第75回「りんどう句会」報告

第75回「りんどう句会」報告

(2023年8月28日(月)鎌倉芸術館にて開催)

第75回句会は14名の出席、一人欠席投句で、一人3句ずつ全45句の出句でした。当月の兼題は北村拓水さん出題の秋の季語盂蘭盆会です。                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                          

今回の最高点は、鈴木金平さんの句「鰯雲詫びて逝きたき人多し」で、10点を獲得

しました。この句は自分の思っていることをそのままうまく詠っていて、身につまされることが多いと選者は口々に述べていました。そして、季語の「鰯雲」が秋の寂しさを表し、句を引き立てていると絶賛されました。

次の7点句は、北村拓水さんの「暮れなづむ帰路の背を押す法師蝉」で、夕暮れの法師蝉が「いいよ、いいよ」と背を押しているようだという選評がありましたが、作者は「人生の終わりに向かっている自分に対して、同じように生命の終わりを目前にした法師蝉に背を押されているように感じられる」ということでした。

 また、6点を獲得した田村昌恵さんの「迎へ盆」の句は先祖を迎える盆の入りの良い情景が詠まれている、「家中の明かり」という表現が良いなどの選評がありました。      次回は9月25日、兼題は山田伸子出題の「夜長」です。兼題1句と当季雑詠2句をご用意ください。

 当句会への新規入会あるいは体験参加希望の方は、鎌倉稲門会事務局あてメールでお問い合わせください。

        【今月の高得点句(同点句は兼題優先)氏名は俳号

10点句)   鰯雲詫びて逝きたき人多し         鈴木金平

(7点句)  暮れなづむ帰路の背を押す法師蝉    北村拓水          

6点句)   家中の明かり点さむ迎へ盆       田村昌恵          

(5点句)  産土に帰る場所無き盂蘭盆会      石川一洋

(4点句)  盂蘭盆会幼き霊に花を買ふ       藪野詠子

(3点句)  原子力空母寄港す盂蘭盆会       前川たく

 黒髪の球児躍動風さやか        吉崎明光

 人恋ふや歌人の庭の女郎花       田村昌恵

 雨後の朝羽化せし蝶の深呼吸      田村昌恵

                              (山田伸子記)


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2023年08月14日

第74回「りんどう句会」報告

                

74回「りんどう句会」報告

2023731日(月)鎌倉芸術館にて開催) 

今回も全員参加(内2名はメール投句)、合計45句の投句がありました。当月の兼題は藪野詠子さん出題の「風鈴」。風通しの良いところに吊るし、その音色に涼気を楽しむという本意の夏の季語です。

今回も合評の場ではそれぞれの句について活発な意見交換が行われましたが、特に、千葉ふみこさんの<風鈴の音絶え瀬戸は波畳む>の句について話題になりました。愛媛県ご出身の千葉さんが、瀬戸の夕凪の状態を的確な措辞(詩歌における言葉の使い方)を使用して詠まれた佳句です。

なお、この句では、「波畳む」の解釈が分かれました。この語をWEBで検索すると、「波畳む」を使用した例句として、「波がおさまって静かになる」と解釈できる句と、「波涛を畳む」と同意の「波がさかんにわきあがって、うねりよせるさま」と解釈できる句と、両方見られました。

私自身、選句の際にこの句を「前者の意」と捉え、一旦特選に選んだのですが、広辞苑にない「波畳む」を後者の意味と捉え直し、「風鈴の音絶え」との不整合性ありとして選外としてしまいました。しかし、作者から、類語辞典で「凪」の類義語として「波畳む」を見つけたので使用したと説明いただき、それを尊重して評価するのが妥当と思われました。私の迷いでしたが、やはり特選にすべき句だったと思います。

もし、本欄の読者で、「波畳む」の意味についてご教示いただける方があれば、宜しくお願い致します。

鈴木金平さんの<気に沿はぬ風は無視して江戸風鈴>の句も、「江戸風鈴」がとても効いた面白い句として点を集めました。

また、最高得点句の、千葉ふみこさんの<病む人の手に汗の手をただ重ね>の句も、「汗の手をただ重ね」の措辞に、状況がしっかりイメージできるとの評が寄せられました。

なお、当日は句会終了後、発足満6周年記念を兼ねて、1年ぶりに暑気払いの懇親会を行いました。

次回は828日(月)、鎌倉芸術館会議室で13時から16時まで開催予定。兼題は「盂蘭盆会」(北村拓水さん出題)。兼題1句と当季雑詠2句をご用意ください。

当句会への新規入会あるいは体験参加希望の方は、鎌倉稲門会事務局あてメールでお問い合わせください。

【今月の高得点句(一部添削後。同点句は兼題優先)氏名は俳号

11点句)   病む人の手に汗の手をただ重ね      千葉ふみこ 

(7点句)  風鈴や膝枕して耳掃除           吉崎明光

(5点句)  気に沿はぬ風は無視して江戸風鈴          鈴木金平

(4点句)  風鈴の音絶え瀬戸は波畳む         千葉ふみこ 

             子かまきり一丁前の威嚇かな        田村昌恵 

          右左片蔭たどりたどり行く         高吉よしえ

           白壁に空蝉五つ競い鳴き          藪野詠子

(3点句)  風鈴に出迎へらるる医者帰り        前川たく

         草野球西瓜の浮かぶ金盥          田村昌恵

         猛暑日や今夜はカレーと夫が言ふ      高吉よしえ

         ががんぼはいづこに妻の後れ毛に      吉崎明光 

                            (吉崎明光記)

                        


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2023年07月05日

第73回「りんどう句会」報告

73回「りんどう句会」報告

2023626日(月)鎌倉芸術館にて開催) 

20176月に当句会発足以来、毎月欠かさず句会を開催、当月で7年目に入りました。前回見学者も正式に入会し、会員は15名となりました。益々充実した同好会活動を目指して行きます。

今回も全員参加(内1名はメール投句)、合計45句の投句がありました。当月の兼題は鈴木金平さん出題の初夏の季語「羅(うすもの)」。歳時記では、「紗、絽、上布など、薄く軽やかに織った織物、また、それらで仕立てた単衣(ひとえ)の総称」との説明があります。                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 

鈴木真砂女(まさじょ)の「羅や人悲します恋をして」という名句を超える句が披露されるかどうか、大いに楽しみにしていました。

「羅」の似合う父の思い出を詠んだ句(千葉ふみこさん、藪野詠子さん)や、母を詠ん

だ句(手島廉雲さん「うすものを羽織る姿や母想ふ」)などが皆さんの共感を呼んだようです。安藤宗幸さんの「羅の僧はバイクで荒稼ぎ」もこの時期よく見る光景ですが、面白いですね。日常生活の中で発見した面白い光景を句にする、これも俳句の楽しみです。

そのほか、2点以下ではありましたが、次のような句も話題になりました。

「羅着(き)いざ手弱女の戦場(いくさば)へ」(鈴木金平さん)、「うすものの内なる愁ひ透かしをり」(福田くにもとさん)、「羅を愛の如くに着こなして」(石川一洋さん)、「羅の襟元合はす佳人かな」(山田伸子さん)、「うすものやいつしか妻の顔となり」(吉崎明光)など。

7点句の鈴木金平さんの句、「梅雨寒や隣の嫁は戻らぬか」は、「梅雨寒」という季語に取り合わせた事柄が何ともユニークで俳諧味たっぷり(隣の家では深刻でしょうが)、まさに金平さんワールド全開の句でした。

15名の会員の個性が発揮された句がこれからもどんどん生まれてくることを期待しています。

次回は731日(月)、鎌倉芸術館会議室で13時から16時まで。兼題は「風鈴」(藪野詠子さん出題)。兼題1句と当季雑詠2句をご用意ください。

なお、当日は句会終了後、暑気払い(懇親会)を予定しています。

当句会への新規入会あるいは体験参加希望の方は、鎌倉稲門会事務局あてメールでお問い合わせください。


【今月の高得点句(一部添削後。同点句は兼題優先)氏名は俳号

   10点句) 羅の似合ひし父やセピア色        千葉ふみこ 

  (7点句) 梅雨寒や隣の嫁は戻らぬか        鈴木金平

   (4点句) 羅の僧はバイクで荒稼ぎ         安藤宗幸

          偏屈も有りかと思ふ捩れ花         田村昌恵

         キッチンを風抜けてゆく梅雨晴間      山田伸子

         残照の火の剣となる夏至の海        石川一洋

    (3点句)羅を粋に羽織りし(ちち)の背な         藪野詠子

         味噌煮にす鯖下す手に染みひとつ     千葉ふみこ 

            もの足りぬ膳に一皿冷奴          高吉よしえ

           黴の書に半券二枚付きしまま        吉崎明光

           泡いくつ吐けば咲き切る水中花       浜崎かづき 


                          (吉崎明光記)

                        


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2023年06月05日

第72回「りんどう句会」報告

第72回「りんどう句会」報告

(2023年5月29日(月)鎌倉芸術館にて開催)

第72回句会は見学者(体験参加)1名を含め15名の参加(内1名はメール投句)、合計45句の投句がありました。当月の兼題は前川たくさん出題の初夏の季語「若葉」                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                         

今回の最高点句(9点)、鈴木金平さんの「彼の世まで消せぬ火のあり遠花火」は、の句と読むか否かで男女間で解釈が分かれました。男性陣は「これは絶対、恋の句!」と強調、女性陣からは「男性はいつまでもロマンチストだから・・・。恋の句とは読まなかった。『火』は人生においていろいろと後悔したことなどの意味と解釈した」との評。

最後に作者が「これは恋の句」として、若い頃からある人に対して引きづってきた思いを具体的に説明されましたが、プライバシーに関することなので、ここでは割愛。いずれにせよ、この句は季語の「遠花火」がとても効いている、という点では全員の意見が一致。

同じく9点句の私の句の「祭髪」は初夏の季語「祭」の傍題。古くは「祭」と言えば京都の賀茂祭(葵祭)を由来として初夏の季語となりましたが、現在は夏季に行われる各神社の祭礼の総称として使われています。

石川一洋さんの7点句、「若葉雨セーラー服が駆け抜ける」と、選外ではありましたが、「女生徒の白シャツ眩し乱れ雲」の句には、大いに盛り上がりました。

6点句の藪野詠子さんの句、「幾重にも若葉に若葉伊豆の山」は、リフレインが見事ということで点を集めました。

同じく、千葉ふみこさんの「辛き日は香水胸にひとしづく」の句は、男性にはとても詠めない感覚の句。

3点句の私の「あめれの若葉や母の野辺送り」の句は、30年近く前の5月初旬に亡くなった母の葬儀の日の思い出。雨上がりの若葉に命が瑞々しく吹き込まれているのに対して、生を終えたばかりの母の野辺送りの寂しさを対比させて詠んだものです。

同じく3点句の前川たくさんの「湯もみ」の句は、草津温泉で有名な湯もみの情景を詠み込んだもの。千葉ふみこさんの「千年の伝統」の句は英国の戴冠式を句材としたもの。

1点句ではありましたが、北村拓水さんの「樟若葉樟脳取りし土佐の里」の句は、土佐が昔「大いなる樟脳の産地」で、三菱の創設者、岩崎弥太郎が樟脳生産で莫大な利益を生み出して、土佐藩はそれで軍艦や武器を購入、のちの倒幕にもつながった、という土佐出身の拓水さんのお話も興味深いものでした(これは句会終了後の、「反省会」と称する飲み会で詳しく聞いたことも含みます)。「反省会」も楽しいですよ。それが目的で句会に参加しているという方もいます!

また、選外ではありましたが、手島廉雲さんの「母の日やヤンキーの手に赤き花」、高吉よしえさんの「角の家車の屋根に梅を干す」など、街でふと目にした情景を上手に句材として捉えたと思います。

次回は6月26日、兼題は鈴木金平さん出題の夏の季語「羅(うすもの)」です。

歳時記には、「紗、絽、上布など、薄く軽やかに織った織物、また、それらで仕立てた単衣の総称」と説明があります。特に男性には難題。兼題1句と当季雑詠2句をご用意ください。

なお、当句会への新規入会あるいは体験参加希望の方は、鎌倉稲門会事務局あてメールでお問い合わせください。

    【今月の高得点句(原句のまま。同点句は兼題優先)氏名は俳号

   (9点句) 彼の世まで消せぬ火のあり遠花火   鈴木金平

              父の背に眠りこけたる祭髪      吉崎明光 

   (7点句) 若葉雨セーラー服が駆け抜ける    石川一洋 

              住む人も取る人も無く実梅落つ    北村拓水

   (6点句) 幾重にも若葉に若葉伊豆の山     藪野詠子   

              辛き日は香水胸にひとしづく     千葉ふみこ

     (3点句) あまれの若葉や母の野辺送り     吉崎明光

            山若葉湯もみの人の草津節      前川たく

               千年の伝統の馬車若葉雨       千葉ふみこ 

             廃校に残る大樹やくす若葉       浜崎かづき

             山の宿朴の若葉に五目飯        田村昌恵 


                           (吉崎明光記)




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2023年05月23日

第71回「りんどう句会」報告

第71回「りんどう句会」報告

(2023年5月1日(月)鎌倉芸術館にて開催)

第71回句会は13名の出席、1名のメールによる欠席投句で、一人3句ずつ全42句の出句でした。当月の兼題は浜崎かづきさん出題の春の季語陽炎です。                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                  

今回の最高点は、浜崎かづきさんの句、「身の上を問はず語りの遍路宿で、9点を獲得しました。選評では、「デジャビュの句。多くの類句がありそうではあるが、句としてはきちんとまとめられている良い句」という感想がいくつも述べられました。かづきさんの実体験に基づく句ということです。

7点句の田村昌恵さんの句は、酒の香りのする酒蔵の並んでいる街の様子が映像として目に浮かぶという選評がありました。この句では、上五の「陽炎に」は、つかみどころのない陽炎の特徴がそれ以下の「酒の香りや蔵の街」との取り合わせとして詠われています。

同じく7点句の山田伸子の句は、春といっても楽しいことのみではなく、門出を前にした若者の不安や揺れる心がよく表現されているとの選評がありました。特に、「桜どき」という下五の季節感がとても効いているとの評もいただきました。

6点句は、吉崎明光さんの句で、同世代、しかも早稲田の同窓生で、いまだに某ビール会社や住宅メーカーのCMなどに出演するなど現役で活躍している女優の吉永小百合さんと「昭和の日」という季語の取合せがはまっているとして、多くの仲間の心をつかんだようです。明光さんは、学生時代、図書館で偶然隣の席に座っていた彼女に気が付いたときの思い出をいかにも嬉しそうに披露していました。

次回は5月29日、兼題は前川たくさん出題の夏の季語「若葉」です。兼題1句と当季雑詠2句をご用意ください。

 当句会への新規入会あるいは体験参加希望の方は、鎌倉稲門会事務局あてメールでお問い合わせください。

【今月の高得点句一部修正、同点句は兼題優先)氏名は俳号

(9点句)  身の上を問はず語りの遍路宿        浜崎かづき

(7点句)  陽炎に酒の香りや蔵の街          田村昌恵

       青年の門出の憂ひ桜どき          山田伸

(6点句)  息永き吉永小百合昭和の日         吉崎明光

(4点句)  祖父譲り負けん気顔の一年生        鈴木金平

 百千鳥音叉ひとつの調律師         前川たく

(3点句)  かげろふの不思議を問ひし幼なき日     高吉よしえ

 寺の脇蝌蚪湧く池面さんざめく       千葉ふみ子

                                   (山田伸子記)





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2023年04月11日

第70回「りんどう句会」報告

第70回「りんどう句会」報告

(2023年3月27日(月)鎌倉芸術館にて開催)

70回句会は欠席投句2名を含む13名の投句で計39句、選句は⒕名で行いました。当月の兼題は千葉ふみこさん出題の春の季語「枝垂桜」。その容姿から糸桜とも呼ばれ、淡紅色の一重の花が天蓋の形で枝垂れる姿はとても艶っぽくて美しいものです。                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                          

千葉ふみこさんの「幾千の恋路見つめて紅枝垂」や、石川一洋さんの「秘め事を覆ふ如くに紅枝垂」は特にそのあたりの本意を印象的に捉えた句で多くの読者の共感を呼びました。

当季雑詠では、田村昌恵さんの「青信号園児手に手につくしんぼ」は「つくしんぼ」がとても効いていて可愛らしいとの声が多く、最高点の10点句となりました。

千葉ふみこさんの「咲き競ふ木蓮の白空の青」は見上げる高木の白木蓮と空の青との

対比が見事との評、また、福田くにもとさんの「草餅を食むのが先の寺参り」(古語では、食む=はむ、と読みます)の句には皆さん大笑いでした。

 3点以上の得点を上げた句は以下に掲げますが、それぞれの句を味わっていただければと思います。なお、ここには掲げませんが、無点句を含めた2点以下の句にも佳句がたくさんあります。会員それぞれのこれまでの人生経験や感性、好み、句歴等々の違いにより、選が分かれるのは俳句ではむしろ当然のことです。

次回は5月1日(月)(当初予定は4月最終週の月曜日の24日でしたが、都合により変更)開催で、兼題は浜崎かづきさん出題の「陽炎(かげろう)」です。兼題1句と当季雑詠2句をご用意ください。

 当句会への新規入会あるいは体験参加希望の方は、鎌倉稲門会事務局あてメールでお問い合わせください。お待ちしております。


【今月の高得点句(原句を一部修正。同点句は兼題優先)氏名は俳号

     (10点句) 青信号園児手に手につくしんぼ   田村昌恵 

     ( 8点句) 咲き競ふ木蓮の白空の青      千葉ふみこ 

     引越しの荷や車座の桜餅       吉崎明光

     ( 7点句) 幾千の恋路見つめて紅枝垂     千葉ふみこ 

     ( 5点句) 草餅を食むのが先の寺参り     福田くにもと

     ( 4点句) 秘め事を覆ふ如くに紅枝垂     石川一洋 

     糸桜地を掃くやうに吹かれをり    浜崎かづき

     ( 3点句) 老いてなほ華やぎ増して糸桜     高吉よしえ 

            春昼やうかうか歳を重ねをり     石川一洋


       (吉崎明光記)


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2023年03月27日

第69回「りんどう句会」報告

第69回「りんどう句会」報告

(2023年2月27日(月)鎌倉芸術館にて開催)

第69回句会は全会員出席で14名、一人3句ずつ全42句の出句でした。当月の兼題は田村昌恵さん出題の春の季語春光です。                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                         

今回の最高点は、石川一洋さんの句「春泥や戦車の轍幾重にもで、7点を獲得しました。ニュースで見るウクライナの悲惨な状況に思いを走らされ、戦争が早く終わって欲しいという気持ちになりますね。

6点句は吉崎明光さんの句が2句です。「サハリン遥か春望の利尻富士」は、「春望」が兼題「春光」の傍題です。稚内からの高速船上、利尻富士を眼前にしてサハリンへの思いをロシア領という気持ちも踏まえて詠んだそうです。3人の選者が特選に入れています。

梅東風や見慣れぬ文字の絵馬二枚」は、「日ごろあまり目にしない文字で書かれた絵馬」というのが興味深いという選評がありました。作者は、「あるいはウクライナからの難民が支援者に案内されてお参りした際に、絵馬に願いを込めたものかもしれないなどと想像を巡らした、でも、二枚あるのは一人ではなさそう、と思った点に若干の救いも感じた」と説明していました。(「梅東風=うめごち」)  

次回は3月27日、兼題は千葉ふみ子さん出題の「枝垂桜」です。兼題1句と当季雑詠2句をご用意ください。

 当句会への新規入会あるいは体験参加希望の方は、鎌倉稲門会事務局あてメールでお問い合わせください。


【今月の高得点句(同点句は兼題優先)氏名は俳号

(7点句)  春泥や戦車の轍幾重にも          石川一洋        

6点句)   サハリン遥か春望の利尻富士        吉崎明光

       梅東風や見慣れぬ文字の絵馬二枚      吉崎明光

(5点句)  御神籤をまた引き直す受験生        前川たく

       春一番スーツケースが走り出す         浜崎かづき

(4点句)  春の日や今日退院の夫を待つ        藪野詠子

        病室に歳時記を繰る夜ぬくし        鈴木金平

(3点句)  春コート修司の如くひるがへす       石川一洋

 盛り付けは備前に蕗の薹揚げて       吉崎明光

 耳澄まし鳥当て遊ぶ春茶室         千葉ふみ子

  

      (山田伸子記)


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2023年02月06日

第68回「りんどう句会」報告

第68回「りんどう句会」報告

(2023年1月30日(月)鎌倉芸術館にて開催)

第68回句会は久々に13名の全会員出席で一人3句ずつ全39句の出句でした。また、今回は安藤宗幸さんの見学参加があり、選句に参加していただきました。当月の兼題は高吉よしえさん出題の冬の季語「日脚伸ぶ」です。                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                       

今回の最高点は、田村昌恵さんの句「初釜や母の晴れ着に祖母の帯」で8点を獲得しました。季語の「初釜」をはじめ「母の晴れ着」「祖母の帯」が、いかにもお正月らしさを感じさせる句だという選評を多く集めました。

山田伸子の7点句「年賀状去年の問ひの答へ来ぬ」は毎年の年賀状のやり取りによくある風景をうまく句にしているという選評を得ました。 

今回は兼題の句の他に、「初釜」「年賀状」「七草」「賀状」「初景色」など新年の季語(傍題)による句が多く寄せられ、1月にふさわしい句会でした。

また、最近の句会の新しい傾向として、4点句の「五十年ぶり」の句や3点句の「恋猫」の句のように、背後に気になるドラマが感じられる句が選評会を賑わしています。  

次回は2月27日、兼題は田村昌恵さん出題の「春光」です。兼題1句と当季雑詠2句をご用意ください。

 当句会への新規入会あるいは体験参加希望の方は、鎌倉稲門会事務局あてメールでお問い合わせください。


【今月の高得点句一部修正、同点句は兼題優先)氏名は俳号

(8点句)  初釜や母の晴れ着に祖母の帯        田村昌恵

(7点句)  年賀状去年の問ひの答へ来ぬ        山田伸子

5点句)   七草を空で言ひ終へ粥を食む        石川一洋

(4点句)  日脚伸ぶまだボール蹴る子等の声      高吉よしえ

       日脚伸ぶ背の赤子の大あくび        浜崎かづき

        片肌を脱いで杜氏の寒造          浜崎かづき

 五十年ぶり旧姓の賀状来る         吉崎明光

(3点句)  恋猫の寡婦の敷居を危ふくす        鈴木金平

 故郷の汁(つゆ)味の濃き晦蕎麦       福田くにもと

 モノクロの旅路に冬の瀑布かな       山田伸子

 托鉢の僧の低唱冬日影           田村昌恵

                              

(山田伸子記)


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2023年01月27日

第67回「りんどう句会」報告

第67回「りんどう句会」報告

(2022年12月26日(月)鎌倉芸術館にて開催)

第67回句会は12名の出席、1名のメールによる欠席投句で一人3句ずつ全39句の出句でした。当月の兼題は吉崎明光さん出題の冬の季語「霜夜」です。


今回の最高点は、福田くにもとさん、田村昌恵さんの句で夫々7点を獲得しました。

福田くにもとさんの句は「寒さで竹が割れるバシッという音を聞いた自分の体験が思い出される、昔の旅の思い出のようだが、旅先の宿で聞いたというのが良い」などの選評があり、選者全員が「竹割れ聞こゆ」の表現が良いとのことでした。一方、俳句では「聞こゆ」(見る/聴くなど)のような表現は敢えて使わずに、読み手にそれを感じ取ってもらう表現にするのが一般的だという吉崎代表の貴重なコメントがありました。


田村昌恵さんの「煤払」の句は、「年中行事の楽し気な句だ、よくある風景だが『華やぎ』という言葉が効いている、うきうきと楽しそう」などの選評がありましたが、「『華やぎ』というのは作者の見た感じで当事者がどう感じているかはわからない」というコメントもありました。


次回は1月30日、兼題は高吉よしえさん出題の「日脚伸ぶ」です。兼題1句と当季雑詠2句をご用意ください。

 当句会への新規入会あるいは体験参加希望の方は、鎌倉稲門会事務局あてメールでお問い合わせください。


【今月の高得点句一部修正、同点句は兼題優先)氏名は俳号

(7点句)  霜夜更け竹割れ聞こゆ旅の宿        福田くにもと

        神職も巫女も華やぎ煤払          田村昌恵

(5点句)   樹の陰に小さき実生の冬もみぢ       山田伸子

       年毎に書くも受くるも減る賀状       高吉よしえ

(4点句)  十年の恋を捨て去る柚子湯かな       石川一洋        

       法華堂跡の夢幻や落葉降る         吉崎明光

(3点句)  遠くから夜汽車の汽笛露夜更く       浜崎かづき

 一鉢のポインセチアや部屋明かし      高吉よしえ

 病みし汝の息うかがひつ蜜柑食む      鈴木金平


                                (山田伸子記)

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2022年11月11日

第65回「りんどう句会」報告


第65回「りんどう句会」報告

(2022年10月31日(月)鎌倉芸術館にて開催)

第65回句会より新しく石川洋一(俳号一洋)さんを迎え、会員は13名となりました。今回は全会員の出席で一人3句ずつ全39句の出句でした。当月の兼題は手島廉雲さん出題の秋の季語「月」です。

今回の最高点も前回と同じ北村拓水さんの句で、「秋の雲鰯へ鯖へ鱗へと」で

10点を獲得しました。中七、下五が鰯へ鯖へ鱗へと」と鰯雲、鯖雲、鱗雲と魚関連の語を使って変って行く雲の様子を見事にあらわし、大変リズミカルであり、面白いという選評を多く得ました。

6点句は鈴木金平さんの作で、作者自身が台所に立って南瓜を料理した時の句だそうです。包丁で南瓜を切る苦労が「南瓜めが」にあらわれていて、経験者ならすぐ納得するユーモラスな句でした。また、「包丁銜(くわ)へ離さざる」という擬人法が効果的に使われているということでした。

次回は11月28日、兼題は福田くにもとさん出題の「初雪」です。兼題1句と当季雑詠2句をご用意ください。

 当句会への新規入会あるいは体験参加希望の方は、鎌倉稲門会事務所あてメールでお問い合わせください。

【今月の高得点句(一部修正、同点句は兼題優先)氏名は俳号

(10 点句) 秋の雲鰯へ鯖へ鱗へと         北村拓水

6点句)  南瓜めが包丁銜へ離さざる       鈴木金平

(4点句)  月浴びて踊り尽くさむ彼の世まで    鈴木金平

       月と犬連れて月夜の散歩かな     浜崎かづき

       風読みて故郷へ発つや鷹柱      千葉ふみこ

       秋ともし骨董の椅子軋みけり      山田伸子

(3点句)  団栗を拾ふ母子の相似形        吉崎明光

       秋日受く置かれしままの観光誌    福田くにもと

       漱石の直球の句や明日子規忌     千葉ふみこ

       

                                   (山田伸子記)

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2022年10月13日

第64回「りんどう句会」報告

第64回「りんどう句会」報告

(2022年9月26日(月)鎌倉芸術館にて開催)

 第64回句会は、12名の会員から3句ずつ、全36句の出句で、その内2名はメール投句でした。当月の兼題は山田伸子出題の秋の季語「秋風」です。

今年は9月に入っても残暑がいつまでも続き、また台風の影響もあり、爽やかな「秋風」はあまり経験できなかったようですが、投句には爽やかな風、寂しい風、もの悲しい風など、季語の持つ幅広い「風」の味わいが反映され、おしゃれな句もありました。

今回の最高点は北村拓水さんの「言へば妻との隙間秋の風」で7点でした。

どこかで聞いたようではありますが、五七五の中七「妻との隙間」に共感したという男性陣の感想が圧倒的でした。けれど、女性からも2名の方から点が入っていて、妻の側からも「隙間」への共感が寄せられたものと思われます。

6点句は2句とも藪野詠子さんの作で、それぞれ「つと秋風とすれ違ひ」、「すとんと秋となりにけり」の副詞が効果的で良かったという選評が語られました。

次回は10月31日、兼題は手島廉雲さん出題の「月」です。兼題1句と当季雑詠2句をご用意ください。

 当句会への新規入会あるいは体験参加希望の方は、鎌倉稲門会事務所あてメールでお問い合わせください。


【今月の高得点句(一部修正、同点句は兼題優先)氏名は俳号


(7点句) 言へば妻との隙間秋の風      拓水

6点句)  曲り角つと秋風とすれ違ひ      詠子

      嵐去りすとんと秋となりにけり    詠子

5点句) 秋風やレモングラスの紅茶の香    明光

      部屋部屋の建具戻りて秋の風     ふみこ

      傘すぼめ行き交ふ道や萩の花     よしえ

(4点句) 巨峰摘む小顔のデニムキャスケット  明光

(3点句) 閉店の貼り紙ゆらす秋の風      よしえ

誰が植ゑし交番前の白式部      ふみこ

                                (山田伸子 記)


稲門会HP第64回りんどう句会 .pdf  ←句会風景 クリックしてください。

  
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2022年09月08日

第63回「りんどう句会」報告

第63回「りんどう句会」報告2022829日(月)鎌倉芸術館にて開催)

 第63回句会は、コロナの感染者状況を鑑みて自由参加形式のリアル句会を実施しました。基本的には全員リアル句会参加の意向でしたが、結果的にはそれぞれの事情により4名がメールによる欠席投句となり、リアルでは8名の参加となりました。兼題「流星」(北村拓水さん出題)と当季雑詠合わせて、従来通り3句×12名=36句の句について、欠席投句者のメールによる選評も含めて、活発な合評(意見交換)が行われました。以下、一部、抜粋してその内容をご紹介します。

 山田伸子さんの「迎え盆」の句は亡き人の魂を迎えて、生前「言ひそびれし」諸々の思いを語ったという、措辞(言葉の用法)の優れた句で、共感を覚えた選者は全員特選を入れました。

千葉ふみこさんの「弧を描き」は、湘南モノレール沿線に住んでいる人の共感を呼んだようです。また同じく「結願の」は季語を上手に使って省略の利いた、句の姿も美しい佳句となりました。

 鈴木金平さんの「十四のあの子」の句は、選者はいずれも、亡くなった子を詠んだ句と捉えたようですが、作者が判明して、「金平さんなら、十四のあの子は絶対初恋の相手に違いない」と句会場は大爆笑。作者によれば、実際その通りでした。

 同じく、「秋単衣」の句は、「秋単衣」は歳時記には載っておらず、季語として許容できるかどうか、その場合、季語「虫干」の傍題の「風入るる」との関係はどうか、などの議論で大いに盛り上がりました。

なお、次回は926日(月)、現時点ではリアル句会の予定で、兼題は山田伸子さん出題の「秋風」です。兼題1句と当季雑詠2句をご用意ください。

 当句会への新規入会あるいは体験参加希望の方は、鎌倉稲門会事務所あてメールでお問い合わせください。

句会では原則、11句について和気藹々とした雰囲気の中で自由に意見交換を行うので、確実に「俳句力」が向上していきます。楽しいですよ。是非ご連絡をお待ちしています。


【今月の高得点句(同点句は兼題優先)原句のまま 氏名は俳号

(8点句) 迎へ盆言ひそびれしを語りけり 山田伸子

(5点句)弧を描きモノレール追ふ秋燕  千葉ふみこ

(4点句) 結願の山門の灯や星流る    千葉ふみこ

        流星よ十四のあの子連れて来よ 鈴木金平

        盆提灯ともり野の花浮かびけり 山田伸子

        着ることのなき秋単衣風入るる 鈴木金平

(3点句) 抹茶パフェ美味し墓参の帰り道 吉崎明光

      胡弓の音細く哀しく風の盆   浜崎かづき

      時計跡くっきり腕に秋来たる  高吉よしえ

        家も田もりんご畑も秋出水   千葉ふみこ

        高原の焼もろこしのバスに充つ 吉崎明光

        幕府跡ミッション校に新松子  前川たく *

        *「新松子(しんちぢり」は、新しくできた松かさのこと。                            

       (吉崎明光記)


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