2023年06月05日

第72回「りんどう句会」報告

第72回「りんどう句会」報告

(2023年5月29日(月)鎌倉芸術館にて開催)

第72回句会は見学者(体験参加)1名を含め15名の参加(内1名はメール投句)、合計45句の投句がありました。当月の兼題は前川たくさん出題の初夏の季語「若葉」                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                         

今回の最高点句(9点)、鈴木金平さんの「彼の世まで消せぬ火のあり遠花火」は、の句と読むか否かで男女間で解釈が分かれました。男性陣は「これは絶対、恋の句!」と強調、女性陣からは「男性はいつまでもロマンチストだから・・・。恋の句とは読まなかった。『火』は人生においていろいろと後悔したことなどの意味と解釈した」との評。

最後に作者が「これは恋の句」として、若い頃からある人に対して引きづってきた思いを具体的に説明されましたが、プライバシーに関することなので、ここでは割愛。いずれにせよ、この句は季語の「遠花火」がとても効いている、という点では全員の意見が一致。

同じく9点句の私の句の「祭髪」は初夏の季語「祭」の傍題。古くは「祭」と言えば京都の賀茂祭(葵祭)を由来として初夏の季語となりましたが、現在は夏季に行われる各神社の祭礼の総称として使われています。

石川一洋さんの7点句、「若葉雨セーラー服が駆け抜ける」と、選外ではありましたが、「女生徒の白シャツ眩し乱れ雲」の句には、大いに盛り上がりました。

6点句の藪野詠子さんの句、「幾重にも若葉に若葉伊豆の山」は、リフレインが見事ということで点を集めました。

同じく、千葉ふみこさんの「辛き日は香水胸にひとしづく」の句は、男性にはとても詠めない感覚の句。

3点句の私の「あめれの若葉や母の野辺送り」の句は、30年近く前の5月初旬に亡くなった母の葬儀の日の思い出。雨上がりの若葉に命が瑞々しく吹き込まれているのに対して、生を終えたばかりの母の野辺送りの寂しさを対比させて詠んだものです。

同じく3点句の前川たくさんの「湯もみ」の句は、草津温泉で有名な湯もみの情景を詠み込んだもの。千葉ふみこさんの「千年の伝統」の句は英国の戴冠式を句材としたもの。

1点句ではありましたが、北村拓水さんの「樟若葉樟脳取りし土佐の里」の句は、土佐が昔「大いなる樟脳の産地」で、三菱の創設者、岩崎弥太郎が樟脳生産で莫大な利益を生み出して、土佐藩はそれで軍艦や武器を購入、のちの倒幕にもつながった、という土佐出身の拓水さんのお話も興味深いものでした(これは句会終了後の、「反省会」と称する飲み会で詳しく聞いたことも含みます)。「反省会」も楽しいですよ。それが目的で句会に参加しているという方もいます!

また、選外ではありましたが、手島廉雲さんの「母の日やヤンキーの手に赤き花」、高吉よしえさんの「角の家車の屋根に梅を干す」など、街でふと目にした情景を上手に句材として捉えたと思います。

次回は6月26日、兼題は鈴木金平さん出題の夏の季語「羅(うすもの)」です。

歳時記には、「紗、絽、上布など、薄く軽やかに織った織物、また、それらで仕立てた単衣の総称」と説明があります。特に男性には難題。兼題1句と当季雑詠2句をご用意ください。

なお、当句会への新規入会あるいは体験参加希望の方は、鎌倉稲門会事務局あてメールでお問い合わせください。

    【今月の高得点句(原句のまま。同点句は兼題優先)氏名は俳号

   (9点句) 彼の世まで消せぬ火のあり遠花火   鈴木金平

              父の背に眠りこけたる祭髪      吉崎明光 

   (7点句) 若葉雨セーラー服が駆け抜ける    石川一洋 

              住む人も取る人も無く実梅落つ    北村拓水

   (6点句) 幾重にも若葉に若葉伊豆の山     藪野詠子   

              辛き日は香水胸にひとしづく     千葉ふみこ

     (3点句) あまれの若葉や母の野辺送り     吉崎明光

            山若葉湯もみの人の草津節      前川たく

               千年の伝統の馬車若葉雨       千葉ふみこ 

             廃校に残る大樹やくす若葉       浜崎かづき

             山の宿朴の若葉に五目飯        田村昌恵 


                           (吉崎明光記)




posted by 鎌倉稲門会 at 21:50| Comment(0) | ◇俳句の会
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